財団法人日本地図センター
普及啓発・教育支援

地図博士の部屋

地図のQ&A―Q16~Q20

Q16:地形図の記号をどのように決めたか?

A:地形図の記号は、(1)図形が簡潔で明瞭なこと。(2)記号がそのものをイメージさせるような形状であること。(3)他の記号との区分が明瞭であること。等に注意して決められています。

地形図に表示する記号・文字等の全ての事項は「図式」により規程されています。利用者の便を考え、図式は一度定めたら、あまり変わることはありません。例えば、1:25000地形図の図式は、昭和61年に定められた後、一部の改訂はありましたが、平成14年まで同じでした。

地図の記号のうち、幾つかについて、いつ定められたか調べてみました。

種類 決まった年 備考
市役所 1891年
学校 1891年 それ以前の記号は違う形
高等学校 1965年
警察署 1955年 それ以前は、現在の交番の記号
寺院 1883年 ただし、名称は、仏閣、仏宇、仏寺院、仏寺、寺院と変わった

Q17:地図の作り方は?

A:作る地図によって作り方は変わります。日本の国土の基本図として100年以上に渡って国土地理院が整備している「地形図」の作り方を簡単に紹介します。

(1)基準点を設置し、基準点測量(三角測量と水準測量がある)を行う。
(2)基準点に対空標識を設置し、航空機より空中写真を撮影する。
(3)空中三角測量を行い、実体視の原理を利用した空中写真図化機によって「図化素図」を描く。同時にこれらのデータを数値化する。
(4)空中写真に写らない地名、境界、山や木、雲の陰の部分の補足調査を行う(該当する自治体や現地で)。
(5)編集及び製図作業。
(6)製版及び印刷作業。

地図の作り方も近年のコンピュータの発達で変わりつつあります。今までは人が手で描いていた地図を、コンピュータ内で図形・記号を発生させながら画面上で地図を作って(描いて)いく方法に変わりつつあります。

なお、国土地理院では、平成14年度から新地形図情報システム(NTIS)を導入しており、従来のラスタ形式での地図編集から、ベクトル形式での地図編集に変更しました。

Q18:地形図の各図の面積は緯度によってなぜ違う?

A:国土地理院の地形図は、各縮尺ごとに経度差、緯度差が決められて区画されています。

例えば、1/25,000地形図の場合は経度差7’30″、緯度差5’で1図葉は区画されていますが、緯線の長さは底辺より上辺は短く、それも高緯度の地形図ほど短く(経線の長さは高緯度のほうが少し長い)なり、その面積は小さくなります。

下表は1/25,000地形図で面積を比較したものです。

図名 緯度 経度 緯線 経線 面積
稚内 45°20′ 141°37’30” 9.80km 9.26km 90.7km2
水沢 39°05′ 141°07’30” 10.81km 9.25km 100.0km2
東京 35°40′ 135°45’00” 11.31km 9.24km 104.6km2
指宿 31°10′ 130°37’30” 11.92km 9.24km 110.1km2
那覇 26°10′ 127°07’30” 12.49km 9.23km 115.1km2

Q19:地図の上方はなぜ「北」を指すのか?

A:『地図の上方が北』になった理由の定説はありませんが、日本の国土地理院をはじめ、各国の政府機関が発行する地図は、殆どが上方を「北」にしています。

これは地図作りのルールというよりも、測量の際、方位を求めると、磁石の針が「北」を指すことによると思われます。また、上方が「北」の地図の方が北極星と方位を対比する場合に便利だからという説もあります。

しかし、例外もいくつかあります。南半球に位置するオーストラリアでは、上方が「南」の地図が作られたことがあります。

また、国土地理院でも、やや方位を傾けた地図を作成したことがあります(1/100,000集成図(「東京とその周辺」「支笏・洞爺とその周辺」など)。これは、縮尺・図郭と包括する地域の大きさ、地図用紙の規格等の関係によるものです。

このような場合には、真北がどちらか分かるように、必ず経緯線や方位記号を描画します。

Q20:地形図の図名はどのように命名されるか?

A:国土地理院の地形図の図名(名称)は、当該の地形図内に含まれる①居住地名の中でもっとも著名なもの、②行政名または著名な山岳、湖・池、原野、浜、岬等の名称、③隣接の地形図名に関連させた名称、の優先順に適宜選定することと定められています。

図名の短い周期での変更は、ユーザーの混乱の原因となることから、あまり変更されません。このため、現状では必ずしもこの基準に当てはまらない図名も見受けられます。

なお、「図名」というのは略称で、図式では「地形図の名称」と定められています。

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