財団法人日本地図センター
普及啓発・教育支援

地図博士の部屋

地図のQ&A―Q6~Q10

Q6:方位、方位角とは?

A:方位は、平易に方角とも言われます。ある方向が、一定の基準方向に対してどのような関係にあるかを示す語です。東西南北を基準として8,12,16,32等に区分してそれぞれ適宜の名称をつけて方角を表すのが一般的です。例えば16等分の場合は、北、北北東、北東、東北東、東・・・等です。このような16方位に区分すると、一つの方位になる範囲は方向角で22.5度の幅があることになります。このように幅が有ることを避けるために、例えば北30度東とか西15度南のように、特定の方角のみを示す言い方もあります。

方位角は、主に測量や地図の分野で使われるやや専門的な用語です。ある地点Aにおいて北(真北)の方向から右回り(時計廻り)に他の地点Bの方向を測った水平角を、AにおけるBの方位角と言います。

地図は、一般に北を上方に示すのが常識のようになっていますが、簡単な道案内図や、絵地図等は、目的さえ叶えば方位にそれほどこだわる必要はありません。また小縮尺の地図で、表示する範囲の広い地図は経緯線が表示されていればその経緯線が方位の拠りどころになりますから、特別な方位を示す記号や注意書きは必要有りません。

地形図は、図郭の左右の縦の線が経線になっていますから、その線上における地点において線の延長の方向が北及び南の方向になります。図郭の上下の横の線は緯線となっていますから、その線上における地点において線の延長の方向が東及び西の方向になります。

Q7: 磁北、方眼北とはなにか(特別な方位の基準)?

A:磁北、方眼北は、特別な方位の基準です。

磁北:
北(真北)に対し、磁石の針の北が指す方向を「磁北」と言います。
日中、野外において真北を知ることは簡単にはできないのですが、磁石があれば磁北を知ることは簡単です。そのため地形図では磁北の方向が真北を基準として方位角で示されています。真北に対し磁北の偏りを偏角といい、それが東に偏れば「東偏」、西に偏れば「西偏」で、これにその角度を添えて偏りの大きさを表します。

しかし、磁北の方位は日時を追って少しずつ変化します。日変化は、変化量も10秒程度と小さく、しかもほぼ毎日周期的な変化なので地図の利用の面では全く問題がありません。一方、永年変化は10年間で10分とか30分とかの変化がありますので、地形図に表示される数値は10年毎に改訂された数値を使うことになっています。2001年10月現在使われていたのは1990年(年初)の値で、2000年(年初)の値は2002年5月に公表されました。公表以後修正される地形図は約10年間の間、2000年の値が使われます。

2000年(年初)の値を1990年(年初)の値と較べると、東京付近では約13分西に変化しました。地形図上の偏角の表示は10分単位で表示されますから、今後修正して刊行される2万5千分1地形図「東京西部」は「西偏約7°0′」と表示されることになります。

ちなみに、偏角の永年変化の例として、2万5千分1地形図の「東京西部」では1990年代は西偏6°50′ですが、1980年代は6°30′、1970年代は6°20′の値が示されています。時代が遡って、伊能忠敬が日本の測量をやっていた1800年頃は江戸では偏差は殆ど無かったと記録されています。さらに、その頃より前の約二百数十年間の東京付近の偏角は東偏を示していたことが地磁気学の分野の研究で実証されています。

方眼北:
平面直角座標で作られた地図に用いられる用語です。2500分1国土基本図・都市計画図等は図郭が平面直角座標系の座標で区画されています。この区画は座標原点からの距離方眼線にもなっているわけですが、方眼の縦線の上の方向を「方眼北」と呼びます。原点を通る方眼北は真北と合致しますが、他の方眼線は真北とは合致しません。方眼北は、原点の東側は真北に対し右に、西側は左に傾きます。

Q8:真北と磁北が合致しないのはなぜか?

A:地軸の北の方向が真北ですが、この方向に地球の磁極があるわけではないことによります。

地球は、地球自体が巨大な磁石体になっていて、地球上の何処にあっても磁性を感じることは一般によく知られています。地球が持つ磁性を、地磁気と呼びますが、地磁気の磁性は高緯度ほど強く、また地球上の各地で観測する磁力線の方向はある特定の2地点に収斂する傾向を示しています。磁力線が収斂する2地点が「磁極」で、北にあるものを「北磁極」、南にあるものを「南磁極」と呼びます。

北磁極と南磁極を結ぶ磁軸は、地球の回転軸に対し約11゜傾いている(1990年発行の測量学事典による)ため、磁北は真北と合致しないのです。また、南北両磁極の位置は固定しておらず、かなりの移動が認められています。イギリスの探検家「ジェームス・ロス(人名)」が1831年に調査した成果を後に計算した結果、北磁極の位置は70.5゜N、96.5゜Wとされましたが、1975年には76.2゜N、100.0゜Wとなっています。

磁力線の方向が、北(真北)の方向に対して偏る角度(水平角)が、地磁気の偏角と呼ばれるもので、地形図は、その一枚一枚にその地形図のほぼ中央にあたる地点の偏角の値が示されています。

偏角の概数値は、求める地点の位置(経緯度)が分かれば、近似式が用意されていて計算によって求められますが、実際に各地で偏角を観測すると、計算によって得られた値とは少し異なる値になる地点が多いのです。その原因は、海や山等の地形の配置状況、地殻を構成する物質の違い、周辺のマグマの活動等が影響を与えるものと考えられています。また、磁極ではないのに磁石の針の方向が固定せず、磁北を観測できないこともあります。八丈島において、昭和48年測量の際にこのようなことがあったため、当時作成された地形図には磁針偏差の値が表示されていませんでした。

2000年年初の我国における地磁気の偏角は、南鳥島を除く各地が全て西偏で、値は北の方ほど大きく南に行くほど小さくなり、また東の方ほど大きく西に行くほど小さくなる傾向を示しています。

各地の値は次のとおりです。(値は、10′単位に整理してあります)

稚内 10°10′ 根室 7°10′ 札幌 9°20′ 秋田8°10′ 仙台8°0′
新潟 8°10′ 東京・名古屋 7°0′ 富山 7°30′ 大阪・広島・高知 6°50′ 福岡 6°40′
松江 7°30′ 熊本・長崎・鹿児島6°10′ 名瀬 4°50′ 那覇 4°0′ 石垣 2°50′
八丈島 6°0′ 父島 4°10′ 硫黄島 3°40′ 沖ノ鳥島 4°0′ 南鳥島 東偏2°10′

Q9:ユニバーサル横メルカトル(UTM)図法、UTM座標系とは?

A:現在我が国の地形図、地勢図等に使用されている投影は、地図の凡例の部分に「ユニバーサル横メルカトル図法」と記述されています。図法の名にメルカトルが付いているとおり、メルカトル図法の投影面である赤道に接する円筒を、地球に対して横に置いて地表を投影した図法と考えると理解しやすいと思います。

ユニバーサル横メルカトル図法の投影は、ガウス・クリューゲル図法が適用されていて、投影は地球楕円面から直接、平面に正角横円筒投影を行う図法です。

図法の名称の片仮名の部分は二人の人の名前で、1822年ガウス(Gauss)が正角図法の理論を展開し、1912年クリューゲル(L.Kruger)が「地球楕円体の平面への正角投影」と題した論文を発表し、1927年ドイツがこの図法を使って地図の作成を行って以来、ガウス・クリューゲル図法と呼ばれています。

UTM座標系は、Universal Transverse Mercator systemの和訳で、各国が大きな縮尺の地図を作成する際、ガウス・クリューゲル図法を用いるに当たり国際的に取り決められた、1投影面の適用範囲やシステム等の準則があり、それをUTM座標系と呼びます。我国の地形図に「投影はUTM図法」と表示してあるのは、UTMの国際的な準則に従っていることの意味と解釈できます。

UTM座標系は、北緯84度(当初は80度でしたが、カナダ等の地域のために現在は84度になっています)から南緯80度の間の地域に適用し、地球楕円面を経度6度毎の経線により楕円面を南北に輪切りにして、経度差の等しい60のゾーン(帯)に分割します。これらのゾーンは、経度180度の線を始発線として西から東に向かって、第1帯、第2帯、・・・第60帯と名付けます。各帯の中央を通る経線を中央経線とし、中央経線の両側各3度の部分をガウス・クリューゲル図法によって一平面上に投影します。

各ゾーンの原点は、赤道と中央経線の交点とし、赤道を横軸、中央経線を縦軸とします。この図法によれば、中央経線と赤道は直線となり、その他の経緯線は互いに直交する曲線となります。

縮尺係数(線拡大率)は中央経線上で0.9996とします。その結果、中央経線より東西に約180kmのところで縮尺係数が1.0000となり、これより外側は縮尺係数が1よりも大きくなり、1ゾーン内の歪みが6/10000以内に収まるように設計されています。

座標は、横軸は右(東)方に、縦軸は上(北)方に数値が増加することとし、座標値は、横軸の原点の値は500,000m、縦軸は北半球に対しては原点の値を0m、南半球に対しては原点の値を10,000,000mとします。これは、いずれの地点でも座標値が負にならないよう配慮したためです。

UTM座標系によって作られた地図は、1ゾーンの中のものであれば平面上で隙間なく繋げることができます。しかし隣のゾーンとの境目は複数の図葉であれば理論的には繋がらずに裂け目ができます。
経緯線の形状は、中央経線と赤道は直線で互いに直交し、他の経線と緯線はそれぞれ曲線で互いに直交し、また1ゾーン内では中央子午線及び赤道に対して対称の形状になっています。またゾーンが異なっても、原点に対して同位置にある経緯線の形状は同一です。

中央子午線と赤道を除いて経緯線は曲線になるのですが、経線、緯線を形成する地形図の図郭線は、直線で作図されています。それは次の理由によります。5万分1地形図は図郭の四隅の辺長が東西15分、南北10分ですが、その間の経緯線をUTM図法で描画しても、直線に対してその中央で最大でも0.1mm程度の間隙が生じる曲率のため、便宜的に直線で描画しているのです。同じ理由で2万5千分1、1万分1地形図の図郭も直線で作図されています。

20万分1地勢図のうちUTM図法によって作成されている図は、経線緯線とも10′毎の直線によって作図されています。

我が国の領土が関係するUTM座標帯とその中央経線の経度は、第51帯・東経123度、第52帯・東経129度、第53帯・東経135度、第54帯・東経141度、第55帯・東経147度、第56帯・東経153度の6ゾーンです。

UTM座標系は、投影・図法の分類から言えば「横軸正角割円筒図法」になります。

Q10:平面直角座標系とは?

A:昭和27(1952)年国土調査法施行令によって定められた、地籍測量・公共測量・それらに関する地図作成のための特別の座標系で、主に地方自治体が作成する、大縮尺図の測量・地図成果に使用されています。

この座標系は、我が国の国土を19の座標系に分け、それぞれに原点を設定し、それらの原点を基準としてそれぞれの範囲について、ガウス等角投影(ガウス・クリューゲル図法と同じ)を適用して測量・地図成果を作成するものです。座標軸は、原点を通る子午線をX軸(縦軸)、原点を通りX軸に直交する線をY軸(横軸)とします。原点の座標値はX=0.000 m 、Y=0.000 m とし、座標値はそれぞれ北及び東方向に増加することとします。

座標系のX軸における縮尺係数は、0.9999とし、原点から最も離れた地点でも地図の歪みが1/10000を超えないように、原点の配置が設計されています。

各原点に適用する範囲は、都府県及び北海道を市・支庁管内で分けた3地区の、それぞれが一つの座標系に属するように定められています。

平面直角座標系は、投影・図法の分類から言えば、UTM図法と同じ「横軸正角割円筒図法」になります。

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