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インタビュー やっぱりあなたも地図が好き 第5回

*** ゲスト フリープログラマ・品川地蔵(しながわ じぞう)さん ***



プロフィール

1948年埼玉県生まれ。本名・片柳由明(かたやなぎ よしあき)。群馬高専電気工学科卒業後、日立製作所のコンピュータ事業部に入社。システムエンジニアとして中小型汎用コンピュータを担当。1980年からは海外担当として、香港、中国、台湾などに出張や駐在を経験。1994年に退社、フリーになり、マッキントッシュでソフト開発を開始。「数値地図ビューア」や「地図画像Mac DE ミール」などを開発。


−−−品川地蔵さんとは、変わったお名前ですね?




『ペンネームのようなものですね。パソコン通信のニフティーサーブ(現@Nifty)に加入したときに、ニックネーム(ニフティではハンドルと言いました)でメッセージをやり取りする習慣があったのです。
今の住まいが旧品川宿の近くで、江戸六地蔵の一つ「品川寺(ほんせんじ)の地蔵尊」が旧東海道際にあります。このお地蔵さんが気に入っていたので、あやかって名付けました。以後パソコン通信や、インターネットの世界ではずっとこの名前で通しています。パソコン通信上のやり取りでトラブルを解消してあげたときに、「ありがたやお地蔵様」なぞといわれて苦笑いですが。』


−−−品川宿のそばとは、なかなか趣があるところにお住まいですが、街道にはご興味がおありですか?

『二十代の後半、サラリーマン時代には土日や連休を利用して旧東海道、旧中山道を歩きましたよ。高度成長期で車も増えていましたから国道ではなく、旧道を歩くようにしたんですね。当時はまとまった資料がなく、地形図上で推定し、現地を歩きながら確認することにしました。旧道沿いに残っている古い水準点は地形図にも載っており、ずいぶん役に立ちました。それ以外に旧道から両側に神社仏閣の参道が延びているのが良い目印になります。後は歩きながら石碑や標石、道祖神などを確認しながら歩きました。当時の地形図はまだ昔の道や村落のイメージをよく遺していたのですが、その後の市街地の発展や高速道路、区画整理などで、今の地形図では判別が難しくなっているところが多いですね。
 山間部の旧道は5万分の1だと載っていないことも多く、やはり2万5千分の1ですね。東海道の時は揃っていたのですが、中仙道はまだで、木曽路は5万でした。歩いた年だったか、翌年くらいに発行されたと思います。後で見て、あ、やはりあの道で良かったんだなとか確認してました。その後、奥州街道や甲州街道も歩きましたけれども』

−−−若いときから地図が好きだったんですね?

『小学生のときからの地図好きですよ。6歳の時に亡くなった父が遺した5万分の1の地形図を10歳頃に棚の上にあるのを見つけたのですが、これの虜になってしまいました。その頃住んでいた浦和から父の故郷の栃木までの四枚(大宮、幸手、古河、栃木)で、今でも保存しています。今思えば綺麗に取っておけば良かったと思うのですが、色々書き込みをしてしまいました。市町村界を赤い線で目立つようにする。市街地を赤く塗る。歩いたり、自転車で通った道を塗るなどしました。その頃は紙質が悪くて傷みやすく、ぼろぼろになってしまってますね。折り目の切れたところにセロテープを貼ったりしたのがさらに拙かったです。
 12歳から新聞配達を始めましたが、その給料で毎月1枚か2枚地形図を購入してました。高専時代は学生寮にいたのですが、部屋の壁から天井にかけて、地理院の50万分の1地方図を貼り合わせていました。地図って立派にインテリアになるなと感心されてましたね。』

−−−それで、若いときからずっと地図関係のお仕事を?

『いや、会社勤務時代は事務システム関係でした。地図ソフトはフリーになってからです。特に決まった計画もなく、退社した後はパソコン関係で何かしようと、漠然としたままで辞めてしまいました。しばらくノンビリしていたのですが、取り敢えず好きなマックでプログラム作りをするかと始めたのです。マックでのプログラム作成は、それまでの汎用コンピュータとは全く違いますので、一から勉強ですが、何か材料がないかなと目に入ったのが地図なんですね。ニフティの「山の展望と地図のフォーラム」に参加していますが、数値地図が個人で入手できるようになって間もなくで、会議室でこの話題が沸騰していたころです。勉強するにも楽しめるものでないと、というわけで数値地図を処理してやろうと始めたわけです。勉強のつもりがそのままずるずると今に至っていますが、今でも趣味半分で地図ソフトをやっています。商売気だけでは元気が出ないですよね。』

−−−私の周辺のマック派からは、品川さんが開発した「数値地図ビューア」や「地図画像Mac DEミール」は圧倒的な支持を受けていますよ。使いやすいし、見た目も美しいといって。




『ありがとうございます。趣味半分で始めたソフトですから、まず自分が楽しめないと面白くないので、自分の感性で絵作りをしています。段彩図の標準色は別にして、用意したカラーセットや、展望図の色遣いなどは趣味が濃厚に出てますね。機能面でもまず自分が楽しめるものを中心にし、ユーザーからの要望も取り込んでいます。技術的なおもしろさから、新機能に取り組む場合もありますけど。


趣味半分とはいっても販売しているわけですから、それ相応の作り方をしています。まず使い易さですね。操作感がマックの標準から逸脱しないこと、マニュアルを見なくともほとんどの機能を使いこなせるように、メニューやダイアログの構成、言葉遣いなどに気を付けています。この辺はかなりの程度目標を達成できたと思っています。新しい数値地図のサポートも含めて、気の付く毎に機能追加/修正をして細かくバージョンアップを繰り返しています。』

−−−海外駐在もされたようですが、外国の地図についてはどう思われますか?

『駐在した台湾はもちろん、出張先の香港やシンガポールでも書店を見つけては現地の地図を探していましたが、気に入るものは見つからなかったですね。陰影段彩図で地形のわかるものが好きなんですが、ほとんどありません。台湾ではまだ戒厳令が敷かれていた時代ですから詳しい地図はどこにも置いてありませんでした。結局日本で購入した地図が一番詳しく、使いやすかったと思います。香港はまだ英国管理下で地図は豊富にあったのですが、ほとんど観光地図か、道路地図で地形のよく判る陰影段彩図のものは見かけなかったですね。北京ではホテルの売店に置いてある観光地図くらいしか目に入りませんでした。まだ文革からそれほど立っていない頃で、とても詳しい地図は望めない状態でしたし。その他の国の地図は東京の書店で、米国やスイス、ニュージーランドのものを散発的に購入した程度ですね。』
 
−−−ニュージーランドですか?

『ええ、何故か中学生の頃からニュージーランドにあこがれてまして。広大な牧場に羊の群れ、富士山形のエグモント火山、氷河もある南島など、一度行ってみたいなという思いはあるんですが、さて、実現できるかどうか。ニュージーランドの地図といっても日本で入手できるのはほとんど英米製ですけどね。』

−−−最後になりますが、大勢のお地蔵様ファンのため、今後も地図ソフトの開発は続けてくださいね。

『もちろん。ここ数年マッキントッシュのシステムの変化が大きく、フォローするのに手間を取られて抜本的な改造ができなかったのですが、やっと安定してきましたので、じっくり取り組もうと考えています。
 また「数値地図ビューア」は国土地理院の数値地図を扱うということで国内専用になってしまっています。世界のデータを扱えるものを作成し、世界中に売り出したいと思って、取りかかっているところです。「夢は大きく」で行こうと思います。』

−−−世界中から「ありがたやお地蔵様」といわれそうですね。どうもありがとうございました。

(聞き手:日本地図センター理事長・野々村邦夫)

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