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Q1:空中写真にはどのようなものがあるか?

A:空中写真は、一般に「航空写真」とも言われますが、国土地理院は地図作成の目的を持って航空機等に搭載した航空カメラよって撮影している地表の写真を「空中写真」と統一して呼んでいますので、当センターもこの呼び名を使っています。日本写真測量学会では、学術用語の統一ということから、「空中から撮影したもの全てを総称して空中写真という」としています。


空中写真と簡単に言ってもいろいろな種類、状態のものがあります。対象となる地域や地表の施設を斜に俯瞰して航空機やヘリコプターで撮影したもの、地図を作成することが目的で航空機等により垂直写真を連続的に撮影したもの等があります。一般的に目に触れるのは前者ですが、ここでは地図を作成することを目的として連続的に撮影された垂直空中写真について説明します。


地図作成に使われる空中写真は、カメラのレンズ中心と地表の撮影中心を結ぶ線(カメラ軸と呼ばれます)が地球面に対し厳密に垂直なものが望ましいのですが、撮影した写真の多くは多少の傾きを持って撮影されていることが多いのです。そこで、地図作成に支障が生じない程度の傾きまでは許容されるものとして、傾きが3°以内のものを垂直写真、傾きが3°以上の物を斜写真と区別していて、斜写真は地図作成用からは除外されます。


空中写真を、撮影したカメラの種類、印画焼付けの材料・印画処理の方法等で分類すると次のようになります。


1) カメラの種類による分類
普通角写真: 画角(レンズ中心が画面の対角線を挟む角)が60°内外の普通角カメラで撮った写真。レンズの焦点距離21cm、画面の大きさ18・18cmのものです。
広角写真: 画角90°程度の広角カメラで撮影したもので、最も多く用いられます。焦点距離15cm、画面の大きさ23・23cmのものと、焦点距離11.5cm、画面の大きさ18・18cmのものがあります。画角120°をこえる超広角写真もあります。
2) 印画焼付けの処理による分類
密着写真: 原フイルムと同じ大きさのもの
引伸し写真: 任意の大きさに引伸したもの。1枚のフイルム全体を引伸ばす時は 4倍程度まで、フイルムの一部を引伸ばす時は10倍までの引伸しが可能です。
モザイク写真: 印画紙に焼付けた画像の必要な部分を取り出して画像が繋がるよう貼り合わせ、広い範囲の画像を1枚にまとめたものを、モザイク写真と呼びます。
3) 感光材料による分類
白黒写真: モノクロ写真ともいいます。可視光の全域に感光するパンクロマテイックフイルムによって撮影したものが一般的です。
カラー写真: 一般のカラー写真と同じですが、高い高度で撮影すると短波長の散乱光の影響によって青味がかって写る傾向があります。
赤外線写真: 赤外線フイルムを使用して撮影したもので、白黒画像です。散乱光の影響を受け難いので、鮮明な写真が得られ土地利用の判読に有利です。
マルチスペクトル写真
(赤外カラー写真):
フイルターを使い特定の波長帯毎に記録した写真で、普通4波長帯に区分したものを使います。森林調査等に有利です。

Q2:空中写真はいつ頃から撮影されたものがあるのか?

A:我国の国土を撮影した空中写真で実際に広域に利用できるものは、昭和20年代以降のものです。昭和10年代に日本陸軍が撮影した写真が約2万枚ありますが、マイクロフイルムに保存されているだけで原フイルムはありません。撮影された画像は周囲ほど不鮮明で、また撮影地域も国土のうちの僅かな部分です。


昭和20年代前半に米軍が国土の全域(一部の離島は無い)を縮尺4万分1で、また大都市や鉄道・国道に沿った部分を縮尺1万分1で撮影した写真が約15万枚あります。いずれも白黒写真です。


昭和30年代半ば以降は国土地理院等が撮影した空中写真があり、同じ地域についてみればほぼ数年毎に撮影が繰り返されています。


これらのものを含めて、国土地理院は現在約103万枚(齣)の空中写真を保有していて、希望者には日本地図センターを通して印画焼き等を提供しています。国土地理院が保有している空中写真の内訳を次に示します。


種類 年代 撮影地域 縮尺 枚数
旧陸軍撮影 1936~1945 北海道・関東・名古屋・他数地域 1:5000~1:50000 19,210
米軍撮影 1947~1951 全国(主要都市及び主要幹線沿・その他) 1:10000
1:20000
1:40000
71,492
5,912
76,039
国土地理院 モノクロ 1961~ 全国 1:40000 62,910
全国 1:10000及び1:12500 87,536
1:20000及び1:25000 254,204
南極等・その他
29,561
カラー 1974~ 全国 1:8000~1:25000 423,528

(2001年9月31日現在)


日本地図センターでは、近年民間団体が撮影した空中写真の提供も行っています。現在は、次の3団体が撮影した写真を対象にしています。


NTT-ME 全国の主要都市の市街地 1:12500 平成11年撮影(カラー)
中日本航空(株) 東京・名古屋・京阪 1:10000 平成9,10年撮影(カラー)
デジタルアーステクノロジー(株) 東京・神奈川・名古屋・京都・大阪・神戸・広島・札幌・仙台・千葉 約1:10000~1:20000 平成13年撮影(カラー)

詳細については、一般財団法人日本地図センター 空中写真部(TEL:029-851-6657)にお問い合わせください。


なお、山地部については、主として林野庁あるいは都道府県林務課が計画・撮影しています。これらの地域の空中写真については、(社)日本森林技術協会(TEL:03-3261-5281)にお問い合わせください。

Q3:空中写真の縮尺はどのようにして求められるか?

A:撮影縮尺は計画上の縮尺で、一つの撮影計画地域全体に一つの縮尺が設定されます。そして、この撮影縮尺(S)が決められると、搭載したカメラの焦点距離 (f)は決まっていますから、航空機の飛行高度(H)が自動的に決まります。( f/H=S )
ところが、地表は高さが一様では無く、起伏があれば、一方向に傾いた傾斜地もあります。撮影された地区が他よりも全般に低いと縮尺は小さくなりますし、高いと縮尺は大きくなります。同じことで、全く平らな地区は別として、1枚の写真の中でも、部分部分によって縮尺は異なっているのです。


仕上がってきた写真の縮尺が、空中写真の申し込みの際に記入する「撮影縮尺」と違う場合があります。したがって、写真の縮尺を求めたい場合は、写真上で高さのあまり変わらないと判断できる複数の地点を選び相互の長さを測ります。次に、地形図等の縮尺が明らかな地図上で写真と同じ地点間の距離を測り、それらの対応する長さと距離の比によって写真の縮尺を求めます。

Q4:空中写真の周囲に表示されている情報の内容はなにか?


A:空中写真には、作業管理・精度管理等のために、写真の周囲に各種のデータが示されています。


国土地理院の空中写真は、例えば「KT-89-1X C1-2」と表示されています。(上図参照)
これは次の意味です。


1) 最初のローマ字「KT」は地方の別を表します。
HO:北海道、TO:東北、KT:関東、CB:中部、KK:近畿、CG:中国、SI:四国、KU:九州、OK:沖縄
記号の前にC がついている場合は、カラー空中写真であることを意味しています。


2) 次の「89-1X」 は、撮影年度と計画番号及び撮影縮尺を表しています。「89」は撮影年度を西暦の下2桁で表しています。ハイホンの次の1は1番目に計画した撮影地区の意味です。その後ろの「X」は、縮尺(Q3参照)を記号化したものです。「X」 は約2万分1、「Y」は約4万分1、無印は約1万分1を意味しています。1990年以降の撮影のものは「X」 は約2万5千分1、無印は1万2千5百分1と変わりました。カラー空中写真も基本的には同じですが、無印の中には地域により8千分1、1万分1,1万5千分1の3種の縮尺のものがあります。


3) 次の「C1-2」は、写真のコース番号と写真の番号です。コース1の2番の写真という意味です。


このほかに、空中写真の画面の周辺には撮影したときのカメラの計器類によるデータが写っています。

Q5:空中写真と地図の違いはなにか?

A:空中写真は、上空からカメラによって地表を撮影したものですから、山、植生、施設等によって隠される部分を除けば、地表あるいはその近くに存在する全ての事物が写っています。しかし、地表との出入り口は別として地下に設置されたトンネル(鉄道、道路、水路等)部分や、現実にそこに形としては存在しない境界、等高線、地名等は写真には写りません。このように写真には、他のものによって隠されたり、もともと写らないものもあるのです。写真は、地表にあるままの大きさ、幅、長さで写りますから、細い道路、単線の鉄道等は見付け難いこともあります。


また、写真はカメラのレンズ中心に光束が集まる中心投影ですから、立体的な形をしたものは撮影中心に対して画像が傾いて写ります。土地に起伏があれば、撮影中心から離れた位置にある部分ほど平面位置の歪み(ずれ)が大きくなります。


一方、地図は、それぞれの縮尺に応じて表示する項目とその記号を定め、平面上に描画表示したものです。表示すると定めた項目のものでも、規模が基準に満たない場合は省略されます。細かな屈曲や形状などは総合描写される場合もあります。地図の縮尺によっては、地表近くにある地下の鉄道、道路、水路等も表示されるでしょうし、境界や等高線等が表示されるでしょう。地名のない地図は地図ではない、と言われるほど、「地名(注記)」は地図にとってとても重要な表示項目です。このように、地図は地表に存在するもの全てを表示したものではなく、表示したものは多くの場合記号化され、誇張して表現されているのです。また、地図は通常、正射投影により位置を表示しますから、正しく作られた地図上では、平面距離や面積の計測も可能になります。


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